宗教施設の要職に女性採用 女性の社会進出に期待
サウジアラビア当局は8月16日、イスラム教の二大聖地であるメッカとメディナの宗教施設の要職に、女性10人を任命したと発表しました。イスラム圏の中でも保守的で、女性にとって未だ様々な制約が残るサウジアラビアにおいて、女性の雇用促進策として一歩踏み込んだ取り組みとして、注目を集めています。サウジアラビアでは2016年4月、国家改革「ビジョン2030」が発表され、石油依存から脱却し発展を目指すための様々な指針が示されました。その中で「労働力に占める女性の割合を22%から30%に引き上げる」ことが経済の発展に向けた目標の一つとして挙げられています。
伝統的なイスラム教の教えのもと、女性は庇護されるべき存在として、様々な行動は男性親族の承認、同行が必要であったり、就業が制限されたりしてきました。しかし「ビジョン2030」発表後、車の運転が解禁されたり、海外旅行の際に男性親族の同意が不要になるなど、女性に対する制約に関する改革が進んでいます。その一つとして今回、宗教上重要な2大聖地の要職に任命されたことは、そのほかの機関においても採用を促すきっかけとなりうる大きな出来事だと言えます。
UAEでも8月28日、2015年より制定されたEmirati Women’s Dayに際して、社会で活躍する女性を称えるメッセージがアブダビ首長国ムハンマド皇太子から発信されたほか(The National掲載)主要メディアでも女性のインタビューが紹介されるなど、女性活躍を推進するメッセージが多く発信されました。今年は特に新型コロナウイルス感染症と戦うフロントランナー、先日打ち上げに成功した火星探査チーム、先月稼働開始した原子力発電部門の女性エンジニア等が取り上げられ、とりわけ社会の注目を集めるプロジェクトにおける女性の躍進が目立った年でもありました。
「世界ジェンダーギャップ報告書(Global Gender Gap Report)2020」における格差指数のランキングでは153か国中UAEが120位、サウジアラビアは146位と他国と比較すると未だ格差は大きいのが現状です。しかし、国における重要な機関・プロジェクトでの女性躍進が広く発信されることで、民間企業含め社会全体にも広がっていくことが期待されます。それにより女性の経済的自立性が高まり、女性マーケットの拡大による新たなビジネスチャンスが生まれる可能性もあり、今後もアラブ諸国における女性躍進の動きに注目です。