NEOMで観光客受け入れ準備が進行中
サウジアラビアが5,000億ドル(約54兆円)を費やし建設を進めている未来型巨大都市メガプロジェクト「NEOM(ネオム)」に関して、NEOMプロジェクトの観光部門責任者のアンドリュー・マケボイ氏は5月初頭にドバイで開かれたアラビアン・トラベル・マーケット(中東の旅行業界を代表する展示会)にて、2024年には最初の観光施設を開業し、観光客の往来が始まると発表しました。マケボイ氏は、NEOMがサウジアラビア本国とは異なる経済特区として扱われると言及し、国の中の国として独自の権限とルールを持ち、「観光客だけでなく、移住を考えている人たちにとっても魅力的な場所になる」とアピールしています。また、観光地として高い競争力を持つためにも、「飲酒の許可は検討の対象から外れていない」と述べました。厳格なイスラム国家であるサウジアラビアにおいて飲酒やアルコールの販売は一切禁止であるため、NEOMにおけるアルコールの取扱が否定されなったことに大きな注目が集まりました。
このマケボイ氏のコメントに対し、サウジアラビア政府は具体的なコメントを出していませんが、国営メディアはマケボイ氏の主張を否定し、「NEOMは経済特区として若干異なる法的な枠組みとして扱われるが、サウジアラビア王国の規則や規制が適用される」と主張する等、NEOMに関する規制や運用ルールについては、今後、具体化するものと考えられます。
そうした中、サウジアラビア観光副大臣のハイファ・アル・サウド王女は2022年5月の世界経済フォーラム(WEF)において、飲酒を合法化する計画はないと表明しました。サウジアラビアは2019年の観光ビザ導入以降、観光客の誘致に成功しているとハイファ王女は述べ、飲酒を解禁しなくても観光に影響を及ぼすことはないと断言し、現在の法律を継続する方向であると説明しました。
サウジアラビアは2019年9月の観光ビザ提供の開始とともに観光客の受け入れを開始し、最初の6カ月で40万件以上の観光ビザを発給するなど、多くの外国人旅行者を引き付けました。2022年5月にWEFが発表した2021年版「旅行・観光開発ランキング」において、サウジアラビアは前年の43位から33位に順位を大幅に上げ、インドネシアに次いで最も順位を上げた国となり、サウジアラビアの旅行産業が多くの観光客を獲得できていることが明らかになる結果となりました。
サウディア航空は2022年6月からドバイとNEOM間の航空便を就航させることを発表しています。当該便はNEOMにとって初の国際定期便となります。今後は、NEOMとロンドン間の国際便についても就航が予定されています。
このようにNEOMプロジェクトは着々と実現しつつあります。それと並行して、サウジアラビアでは観光客誘致や、エンターテイメントの解禁、女性の権利拡充や活躍促進などの改革が進められています。今後、サウジアラビアの計画するNEOMがどのような都市として完成するか、高い関心が寄せられています。
ksnコーポレーションでは、ドバイ政府機関との提携関係の下、UAE、サウジラビア等の中東市場における各種規制の調査から参入戦略の立案、現地パートナー候補のご紹介等といったご支援をさせて頂いております。UAE及びサウジアラビアを含む中東地域への進出や販路開拓にご関心をお持ちの企業様がいらっしゃいましたら、是非お気軽にお問い合わせください。
参照記事:
1. https://www.thenationalnews.com/gulf-news/saudi-arabia/2022/05/26/saudi-arabia-not-planning-to-legalise-alcohol-for-tourists-or-at-neom-princess-says/
2. https://www.thenationalnews.com/uae/2022/05/10/neom-saudi-super-city-to-have-millions-of-neomians-by-2030/