コロナ禍における食料品のEコマース市場の拡大
新型コロナウイルス感染症COVID-19の流行により日本でも不要不急の外出自粛が求められましたが、政府主導で外出禁止令が発令されたUAEでは、食料品のオンライン購入が拡大し、新しい生活習慣の一部となりつつあります。Gulfnewsによると、2019年に3億ドルだったUAEにおける食料品のEコマース市場は2020年大きく拡大し、10億ドルを超えると推計されています。(GULF NEWS掲載”Grocery is what’s ruling UAE online shopping sales in 2020”)オンラインでの食料品販売の拡大は以前から期待されていたものの、Eコマース市場全体でみるとアパレルや電子機器が主な市場拡大をけん引していました。しかしながらCOVID-19の流行による外出制限で生活必需品もオンラインで購入する動きが高まり、Eコマース市場全体に占める食料品の割合が前年の約8.5%から、今年は20%にまで拡大すると予想されています。
総合ECサイトのAmazonやnoonに加えて、主にスーパーマーケットの実店舗を展開しているLuLuやCarrefourのウェブストア経由の宅配サービスも多く利用されており、UAEを中心に約77店舗を展開する高級スーパーのSpinneysが今年に入ってオンライン事業に参入しました。更には、より地域に根差した小規模店舗も現地において普及率が非常に高いスマートフォンのメッセージアプリであるWhatsAppなどのシンプルな会話型コマースツールを活用する等、対面販売が難しくなった状況下でオンラインでの対応が拡大しています。
食品のEコマース販売額については、外出制限が緩和されればこの勢いも落ち着くものと考えられていましたが、外出制限が緩和されても予想以上に需要が大きい状況となっています。現地のコンサルティング会社であるRedSeer ConsultingのパートナーSandeep Ganediwalla氏は、「ロックダウン解除後、食料品のオンライン販売額はピーク時の半分ほどになるという予想に反し、2020年の第3四半期になっても70%程の規模を維持している。」と述べています。
COVID-19の影響が完全になくなった状況ではないうえに、食品のEコマース市場の競争が活発になったことで、配達時間の改善等、消費者の利便性向上にもつながっており、オンラインでの食料品販売は、消費者の生活に組み込まれつつあると考えられます。今後どのようなプレーヤー、サービスが力を伸ばしていくか、市場の動きに注目です。