サウジアラビアがVATの引き上げを発表
サウジアラビアは5月11日、新型コロナウィルスの感染拡大に伴う財政的なダメージへの対応策として、①2020年7月1日からのVATの15%への引き上げ、②2020年6月1日からの政府による生活費手当の打ち切り、③プロジェクトの停止や延期などによる政府支出の削減、という大きく3つの決定を発表しました。サウジアラビアでは2018年初頭より5%のVATが導入され、同年のVATによる税収は122億ドル(およそ1.3兆円)に及び、これは政府の当初の想定を大きく上回るものとなっていました。サウジアラビアの2020年の政府予算が2,720億ドル(およそ29兆円)であることを考えると、今回のVAT引き上げは政府にとって大きな税収増となりそうです。
2番目の生活費手当に関しては、サウジアラビアでは2018年1月より、公務員や国防への従事者に対し、月間1,000リヤル(およそ2.9万円)の生活費手当を支給していましたが、政府は今回この支給の打ち切りを決定しました。3番目の政府支出削減については、サウジアラビアは2016年にSaudi Vision 2030という国家ビジョンを発表し、その実現のために様々なイニシアティブや開発プロジェクトが開始されていました。今回のこの政府の決定により、これらのプロジェクトのいくつかは凍結もしくは打ち切りとなる見込みとのことです。
サウジアラビアのMohammed Al Jadaan財務大臣は、今回の一連の決定は、油価の歴史的な低迷、コロナ対策による民間経済へのダメージと予期せぬ膨大な医療費の発生という3つのショックが重なって起こってしまったことに起因していると述べました。同氏によると今回の一連のコスト削減により1,000億リヤル(およそ2.9兆円)程度の政府支出を減らすことが可能になる見通しとのことです。
こうしたサウジアラビアの大きな動きが、周辺のGCC諸国にどのような影響を与えるかということが注目されますが、このサウジアラビアの発表を受け、UAE政府はすぐに同国ではVATの引き上げは検討していないとの声明を出しています。
前述のMohammed財政大臣の発言の通り、新型コロナウィルスの感染拡大による民間経済活動へのダメージに加え、油価の急激な下落により歳入の大規模な現象の二重苦に見舞われているGCC諸国は、難しいかじ取りを迫られています。今後も各国政府よりこうした大きな決定が発表されていく可能性がありますので、それらの動向を引き続き注視していきたいと思います。