IMFによる中東GCC諸国の実質GDP成長率見通し
国際通貨基金(IMF)は4月14日に、2020年の世界のGDP成長率の見通しを発表しました。それによると、COVID-19による経済の低迷を受ける中で2020年の世界全体の実質GDP成長率は-3.0%と、1930年代の世界恐慌以来で過去最悪の景気後退になるだろうとのことです。中東地域に関する予測については、中東及び中東アジア地域全体で-2.8%のマイナス成長が見込まれています。UAEを含む湾岸協力会議(GCC)諸国の状況を国別に詳しく見ていくと、UAEの2020年の実質GDPの成長率は-3.5%、サウジアラビアは-2.3%、カタールは-4.3%、オマーンは-2.8%、クウェートは-1.1%という見通しになっており、国ごとに差異こそあれ大きな景気後退を迎える見通しが示されています。(バーレーンについての言及はありませんでした。)
その一方で、IMFは2021年に世界経済は4.6%のプラス成長に転じるとの見通しを立てており、GCC諸国もUAEは3.3%、サウジアラビアは2.9%、カタールは-5.0%、オマーンは3.0%、クウェートは3.4%の成長が見込まれています。これらの数値はあくまで現時点での予測に過ぎず、COVID-19に対する各国政府による規制の状況、収束時期、そしてオイルプライスの変動により大きく変わりうると考えられますが、現時点での一つの参考にはなると思います。
ドバイでは4月5日より外出制限が強化されました。これにより外出に際しては政府の事前承認が必要となり、また違反者には多額の罰金が科せられていることから、市内の交通量は驚くほど減少しています。こうした先の見えづらい状況の下で上記のような厳しい見通しもなされてはいますが、ドバイはこの状況を悲観するだけではなく、早くもこの危機の先にある未来を見据え始めています。ドバイのハムダン皇太子が会長を務めるドバイ未来財団(Dubai Future Foundation)は、“LIFE AFTER COVID-19”というレポートを発表し、特に通信や小売、教育そして職場環境といったテーマに関し、COVID-19以降の世界に関しての考察を行っています。
https://www.dubaifuture.gov.ae/publications/
ここでも書かれている通り、ドバイはCOVID-19による今回の危機より前から多くの分野においてデジタル化を推し進めてきました。確かに例えば行政サービスについて考えてみても、ドバイはオンライン化が早くから進んでおり、スマートシティ機能の高さは世界でもトップクラスとなっていました。こうした先見性と実行力は、今回の危機のダメージを緩和し、そして危機後の未来への移行をよりスムーズなものにしてくれるのかもしれません。ドバイをはじめとした中東地域が今後どのように危機を乗り越え、その先にどのような未来を見据えているのかに注目したいと思います。