付加価値税(VAT)導入に係る最新動向等、UAEの税制ポイント解説
現在、UAEでは付加価値税(VAT)の導入の計画が進められています。この新たな税金の導入により、32億ドルの財源確保を見込んでいるとUAE財政相は語っています。
http://www.arabianbusiness.com/vat-add-3-2bn-uae-coffers-in-2018-minister-says-657132.html
かなりの規模での課税が検討されているようですが、具体的にはどのような制度で、いつから課税が開始されるのでしょうか?
ここで、この付加価値税(VAT)に関わる最新動向も含めたUAEの税制についてまとめてみたいと思います。
法人税は課税されていない
ドバイ、アブダビといったUAEの主要な首長国には法人税制度が存在します。しかし、現時点ではこの制度により課税対象となっているのは外国銀行支店、石油・ガス・石油化学会社のみとなっています。
従って、現時点では大半の企業にとって法人税は課税されないという状況になっています。
個人所得税は存在しない
UAEには個人取得税の制度が存在していません。したがって、UAEの法人から従業員等へ給与の支払いを行う場合には、所得税の考慮等は不要になっています。
輸入関税は基本的に5%。免税の商品も多い。
商品輸入の際に、現地の輸入者が支払う関税は基本的に一律5%となっています。ただし、アルコールやタバコ、豚類を使用した製品には100%の関税が課税されます。
また、生鮮食品や、許可を受けた製造業者が輸入する製造原料などは免税となっています。
「手数料」(実質的な税金)の存在
UAEでは各首長国が一部の経済活動にあたり「手数料」を徴収しており、これは実質的な税金と見ることができます。手数料の例はJETROのウェブサイトに掲載されていますが、以下の通りとなっています。
ドバイ首長国が徴収する実質的な税金の例
・アパート(年間):賃借料の5%
・事業資産(年間):賃借料の5%
・ホテル、レストラン、娯楽施設:10%
※ホテル施設等の宿泊客には、別途1室1泊当たり7~20ディルハムのツーリズム・ディルハム(宿泊手数料)が課せられる(2014年3月31日以降。ただし上限30日分)。
・アルコール:30%(消費税)
付加価値税(VAT)の計画概要
付加価値税(VAT)とは日本の消費税のように、商品の購入の際に購入額に応じた税金の支払が求められる間接税です。UAEでは2018年1月から導入されることが決定しています。
最初の段階ではフェーズ1として、年間収入額が37.5万ディルハム以上の企業のみが課税対象となっています。
フェーズ2ではすべての企業が課税対象となりますが、フェーズ2に関する具体的な計画はまだ明らかになっていません。
また、食品、教育、医療等の生活に必要な品目は対象外となっています。
[2017.09追記]物品税の導入について
UAEにおいてたばこ、エナジードリンク等の健康への影響が懸念される商品について高い税率での課税計画が公表されました。詳細についてはこちらの記事をご参照ください。
このように見ると、付加価値税(VAT)の導入後であってもUAEは税金コストの非常に低い国であることがわかります。
特に付加価値税(VAT)の導入フェーズ1においては、その影響は限定的と考えても良いのではないでしょうか。
今回の付加価値税(VAT)導入にあたり、法人税と所得税の課税は当面計画していない、とのコメントも政府より出されているという安心材料もあります。
このほかにも、法人税と関税に関してさらなるメリットを享受できるフリーゾーンやUAEが加盟する湾岸協力会議(GCC)関税同盟の存在など、中東への進出・商品輸出開始にあたって理解しておくべきいくつかの税制が存在します。
(フリーゾーンに関してはこちらのページの資料にまとめておりますので、ぜひご活用ください。)
弊社では、税金等のコスト計算を踏まえた現地進出のフィージビリティスタディなど、様々な形でUAEへの進出をサポートしています。
ご不明な点やご関心がございましたら、是非一度お問い合わせください。