日本の高級品が石油王に売れる? -ドバイ富裕層ビジネスの注意点-
Array中東ビジネスといえば「石油王が高級品を買い漁る」といったイメージをする方も多いのではないでしょうか?
日本産の商品やサービスがデザインや品質といった「高付加価値」を志向するケースが増えるなかで、こうしたイメージから中東、特にドバイがターゲット市場として検討されることが増えてきています。
そこで今回の記事では、
・ドバイの富裕層はどれぐらい豊かなのか?
・どのぐらいの人数がいるのか?
・日本産の商品が高く売れているのか?
といった富裕層向けビジネスの実態と、こうしたビジネスを展開する際の注意点について解説します。
ドバイでの高級品市場の例
イメージに違わず、ドバイには日本や他の国では見かけないような高級品市場が形成されています。ドバイ(UAE)限定で金のiPhoneが販売される、フェラーリのパトカーが導入された、富裕層にペットとして飼われていたライオンが逃げた、金(ゴールド)を自動販売機で購入できるようになった、などなど目を疑うような高級品のニュースが現地には溢れています。
画像:ドバイ限定で販売された金のiPhone8(Al Arabiyaより)
画像:フェラーリのパトカー(Telegraphより)
画像:逃走後町中で発見されたライオン(Al Arabiyaより)
画像:金が買える自動販売機(Gulf Newsより)
日本産の商品でも、日本酒「夢雀」がドバイにある「アルマーニホテル」で1本60万円で販売されるなど、日本では考えられないような価格の商品が実際に売買されています。
参考:ドバイで1本60万円! 富裕層にしか味わえない高級日本酒 “夢雀”
画像:高級日本酒「夢雀」(夢雀公式Facebookページより)
統計に表れる豊かさ
統計やランキングで見ても、ドバイ(UAE)は非常に豊かな国です。UAEの一人当たりGDPは約7万ドルで世界第9位となっており、日本(4.88万ドル)の1.5倍以上*になっています。
*出典:IMF2017年統計(PPPベース)
また富裕層の動向を毎年レポートする英ナイトフランク社の「Global Wealth Report 2016」によれば、ドバイは世界の都市の中で25番目に超富裕層*が多い都市であり、こうした超富裕層にとって重要な都市の第5位にランクインしています。
これによると、UAEにいる超富裕層の人数は1,510人。資産1億円以上を持つ富裕層では85,000人以上となっています。
*ナイトフランク社のGlobal Wealth Reportでは、資産3,000万ドル以上を持つ人を「超富裕層」(UHNWI – Ultra-high-net-worth individual)と定義しています。
参考:
The Wealth Report City Series – DUBAI EDITION The Wealth Report 2016
富裕層向けビジネスの実態と注意点
このようにUAEには確かに超富裕層そしてそういった人々をターゲットにした市場が存在しています。しかしこうしたビジネスの展開を検討する際には注意しなければならないことが多くあります。
まず、「世界の他の都市に比べれば多い」とはいっても、先ほど見た通りUAEにいる超富裕層の人数は1,500人強程度です。
富裕層まで広げても、10万人もいません。
このように単純にターゲットとなる人口が少ないという点は、注意が必要な点の一つです。
さらにいえば、富裕層まで幅を広げるとアメリカには約440万人、日本にも約120万人と、人口の多い先進国にはかなりの数の富裕層がいます。
商品の価格帯や特性によっては、何も中東にいる「超富裕層」をターゲットにする必要はないかもしれません。
また、このような狭い市場で勝ち抜くためには、ターゲットをよく分析することが重要となるでしょう。
具体的には彼らがどのような生活をしており、どのような場所で買い物をするのか。どういった手段で情報を得ており、何に価値を感じるのか。といったことです。
こういったことの一つ一つが、日本国内で展開しているビジネスのターゲットとは大きく異なる可能性が高いですので、事前によく検討することが必要です。
生活レベルの違いだけではなく、宗教など文化の違いも考慮に入れる必要があります。
さらに、こうした富裕層をターゲットにした商品を展開しているのは日本企業だけではありません。
欧米の国々や、最近ではアジアの新興国からも富裕層をターゲットにした商品やサービスは、数多く展開されています。
中東の富裕層はこうした高級品の売り込みに慣れており、様々な高品質な商品に触れているため非常に目が肥えています。
当然のことですが彼らは高い商品を何でも買うわけではなく、ユニークなものや本当に価値があるものだけを購入します。
こうした人々には、「日本産だから高い」といった説明も通用しません。
単に「日本産」をアピールするのではなく、コンセプトやデザイン、材質等において「日本産であることの必然性」を訴求する必要があるでしょう。
このようにしてみると、中東には他の国にないような富裕層向けの超高級品市場が確かに存在していますが、この市場の特性を理解したうえで自社商品の展開を進めることが必要、といえるでしょう。
ksn Research & Consultingでは自社商品を中東マーケットで販売している経験も活かし、商品と市場の特性に応じた販売戦略の立案や、事業パートナーの紹介などを得意としています。
UAEの高級品市場に少しでも興味がありましたら、是非一度お問合せください。