アブダビとドバイの違い -UAEの二大首長国を比較 (2)人口、経済-
前回の記事では、アブダビとドバイの国土や政治、文化といった基本的な事項を見てきました。今回は人口構成や経済規模、産業構造など、よりビジネスに直接的に関わる内容を比較していきたいと思います。
人口構成
アブダビの人口は2,908,173人、ドバイの人口は2,698,600人と同程度になっています。両首長国とも、出稼ぎ労働者が多いため外国人比率が非常に高くなっています。外国人の数では、総人口が少ないドバイがアブダビを上回っています。
これは定住者のみの数ですので、出張や観光で訪れる人々を加えればドバイの外国人数はさらに増えるものと考えられます。
グラフ:ドバイとアブダビの人口と自国民比率
(出典:Dubai Statistics CenterおよびStatistics Center Abu Dhabiの2016年統計)
男女比で見ると、両首長国とも男性の比率が非常に高くなっています。これには宗教的な背景と、タクシー運転手や建設現場の作業員として働く、出稼ぎ労働者の存在が影響しているものと考えられます。
ただし2010年から2016年までの女性の人口増加割合は、アブダビでは8.8%(男性は4.1%)、ドバイでは11.6%(男性は4.1%)と、近年女性の人口が急速に増えています。
グラフ:ドバイとアブダビの人口に占める男女の割合
(出典:Dubai Statistics CenterおよびStatistics Center Abu Dhabiの2016年統計)
経済の中心はドバイ?
経済の中心はドバイ、政治の中心はアブダビ、と言われる事が多いのですが、これは必ずしも正確な表現ではありません。アブダビのGDPは728,518百万ディルハム、ドバイのGDPは397,225百万ディルハムと2倍近い差があります。
これには、もうほとんど石油の出ないドバイに対し、アブダビは石油・ガスといった天然資源をまだまだ豊富に蓄えており、生産していることももちろん影響しています。
しかし、石油・ガス関連の生産量を含む鉱業を除いてもなお、アブダビのGDPは500,000百万ディルハムを超えており、ドバイのGDPを優に上回っています。
それでは、経済的にもやはりアブダビが中心であり、UAEへ進出するならば人口も経済規模も大きいアブダビを拠点とした方が良い、ということになるのでしょうか?
グラフ:ドバイとアブダビの産業セクター別GDP
(出典:Dubai Statistics CenterおよびStatistics Center Abu Dhabiの2016年統計)
実はアブダビのGDPの中には鉱業以外にも、間接的にオイルマネーが影響している産業セクターがあります。
たとえば金融・保険・不動産業のGDPはアブダビがドバイを大きく上回っていますが、これにはAbu Dhabi Investment Authority(ADIA)の存在が大きく影響しています。
これはアブダビの政府系機関であり、8,000億ドルと言われる運用規模を持つ、世界最大規模のファンドです。
実際のところ、中東の金融センターとしての地位を確立しているのはドバイであり、多くの外資系金融機関がドバイ(特に金融業向けフリーゾーンであるDubai International Financial Centerなど)に拠点を置いています。
他にも建設業、製造業、サービス業などにはこうした石油関連の生産額が含まれているものと考えられます。
ここでもう一度先ほどのグラフを見てみると、産業セクターの中でも流通/販売分野(「卸・小売・貿易・修理業」や「運輸・倉庫・情報通信業」)や「飲食・宿泊業」ではドバイがアブダビを上回っています。
こうした分野ではドバイに多くの外国企業が進出しており、活発に商業活動を行なっています。
このように見ると、経済の中心がどちらかを判定するのは確かに難しいところではあるのですが、「商業の中心はドバイである」ということができるでしょう。
以上見てきたように、ドバイとアブダビにはそれぞれに特徴があり、それを理解して進出戦略を検討することが必要です。
もちろん、UAEそして中東に進出するからにはこれらの両首長国での成功を目指すことになるでしょう。
しかし、どういったセグメントのマーケットを狙い、最初にどこに進出するか、といった戦略を両首長国の特徴に合わせて検討することも、成功を得るためには重要になってきます。
弊社ではお客様の業態や商材にあわせた、適切な進出戦略策定のお手伝いをさせていただく事が可能です。
簡単な情報提供からでもお役に立てればと思いますので、もしご興味がございましたら一度お問い合わせください。
アブダビとドバイの違い -UAEの二大首長国を比較 (1)国土、政治等-