いよいよ今年開催のドバイ万博を総まとめ -新型コロナウイルスの影響は?-
[2020年3月31日追記]本記事の掲載後、後述のとおりドバイ万博運営委員会にて、万博開催時期を1年間延期する提案がなされました。
いよいよ今年開催となるドバイ万博(ドバイ国際博覧会)。
5年に一度開催される万国博覧会、そして中東エリアでは初の開催とのことで、中東を中心として世界中で期待が高まっています。
今回の記事では、ドバイ万博の内容や参加方法等の概要、日本館の内容や準備状況、そして影響が心配される新型コロナウイルスを巡る状況をまとめて解説します。
万博のスケジュールと展示内容
ドバイ万博は、2020年10月20日から2021年4月10日までの約半年間にわたって開催されます。暑い気候のドバイでの開催ということもあり、年内でも遅めの日程からの開始となっています。(複数年をまたいでの開催は、1975〜76年に開催された沖縄国際海洋博覧会以来)
真夏は最低でも30℃、最高では40℃を超えるドバイですが、10月下旬以降であれば一部の時間帯で30℃以上となる程度ですので、快適に過ごすことができるでしょう。
ドバイの年間気温(出典:Weather Spark)
参加国数は192カ国と、文字通り世界中からの参加が表明されています。
目玉となる展示内容としては、あのイーロン・マスクが考案した超高速移動システムであるHyperloopに関する体験型の展示や、次世代通信インフラとして目下注目が高まっている5Gの体験施設などが紹介されています。
Hyperloopはドバイ-アブダビ間を12分で結ぶ交通手段として、UAEで実際にフィージビリティ・スタディのプロジェクトが進められていることもあり、ここで最新の展示が見られることが期待できます。
また5Gに関してもドバイでは2019年の段階で実用化が始まっており、今後ますますこの分野の発展が目指されていることから、体験の機会としては最先端のものになると言えるでしょう。
Hyperloop(画像出典:Virgin hyperloop one 公式サイト)
さらに、ドバイ万博で力が入れられているのは食関係の展示です。
会場には200以上のレストランがオープンするほか、ロボティクスやAR、VRといった技術が食に与える変化に関する展示も行われる予定です。
弊社も中東で食関係のビジネスを展開していますので、この展示には注目しています。
画像出典:ドバイ万博公式サイト
会場とチケット購入方法等
万博のテーマは”Connecting Minds, Creating the future”。サブテーマとして挙げられている”Mobility”、”Opportunity”、”Sustainability”についてはそれぞれの名称を冠する会場が開設される予定です。
会場の広さは438ヘクタールにものぼり、公式サイトの説明を借りると「モナコ公国の2倍以上」(モナコ公国はバチカン市国につぎ、世界で2番目に小さい国家)、「サッカーのフィールド600個分」の広さです。
膨大な広さを誇る万博会場の全景(画像出典:ドバイ万博公式サイト)
会場へは、ドバイの中心地であるDubai Downtownからは車で40分程度。
現地で車の移動手段を持たない方も、地元民が都市内の移動によく使っているDubai Metroに専用の駅がオープン予定なので容易にアクセスできます。
ドバイ万博当局によると、会期中の来場者は2,500万人と見込まれています。
ドバイの人口は330万人程度、UAE全体でも940万人程度ですので、会期中は大変な盛り上がりになることでしょう。
チケットはDubai Expo 2020の公式サイトから、オンラインで購入可能です。
リーズナブルなチケットとしては、AED120の1-day Ticket、そしてAED260の3-day Ticketがあります。(1AEDは2020年3月現在、約30円)
たっぷり楽しみたい方向けにはAED350のMonthly Pass、AED595のSeason Pass(会期中全期間の入場が可能)。
そしてプレミアムなチケットとしては、Season Passに各種バウチャーや優先予約/優先入場権等が付与されたAED895のPremium Pass、AED1,295のUltimate Passと様々な選択肢が用意されています。
東京オリンピックでは、開会式/閉会式や1試合のチケットでも数十万円とかなり高額なチケットが販売されていたことを考えると、半年分のチケットを購入しても18万円程度で済むドバイ万博はお得、と言えるかもしれません。
協賛企業にはエミレーツ航空やEtisalatといった現地企業のほか、ペプシコやシスコシステムズといったグローバル企業、そして日系企業としては日産も名前を連ねています。
日本館の概要と準備状況
ドバイ万博の日本館は、前述の3つのサブテーマのうち”Opportunity”の会場に設置される予定です。
「Where ideas meet (アイディアの出会い)」をテーマとし、メッセージとして‘Join.Sync.Act.’を提示。
パビリオンの設計はLOUS VUITTON 京都大丸店や女神の森センターガーデン(山梨県の複合施設)といった実績を持つ、女性建築家の永山祐子さんが務めています。
1975年生まれと、比較的若い建築家が抜擢されたのには、日本館のテーマの一つとして「次世代のクリエイター等、若者の活躍推進」が挙げられていることも背景にあるのでしょう。
デザインのコンセプトとしては、公式サイトで以下の3点が紹介されています。
・アラベスクと日本の麻の葉文様を組み合わせたファサード・デザイン
・日本の折り紙を表現した3次元の立体格子
・日本と中東の伝統的な環境システムを応用
コンセプト通り幾何学模様と折り紙をイメージさせる、涼しげなデザインが目を引きます。
PRパートナーにはアイドルグループ・関ジャニ∞らのほか、「ポケットモンスター」、「ガンダム」というキャラクターが任命されているのが特徴的です。
パビリオンの準備状況ですが、計画によれば2019年の5月に建設が着工、今年2020年5月に竣工予定となっています。
現在は竣工に向けた大詰めの段階であると予想できます。
参考・画像出典:日本館の建築 – ドバイ国際博覧会 日本館
参考:2020年ドバイ国際博覧会日本館基本計画
新型コロナウイルスの影響は?
新型コロナウイルスを巡る世界の状況は、日々めまぐるしく変化しており、ドバイ万博が始まる10月の状況は不透明です。しかし今夏開催予定の東京オリンピックも延期を巡る議論が盛り上がっている状況であり、秋以降開催されるドバイ万博も、感染拡大を防ぐための判断には厳しい目が向けられることが想定されます。
また、現在UAEは外国人の入国が難しい状況になっており、監督者の渡航や労働者のビザ等にも影響があることから、今まさに建設中の各国パビリオン準備のスケジュールにも影響が出ることは考えられます。
※UAE国内のコロナウイルスを巡る最新の状況はこちらの記事でまとめています。
万博の公式サイトでも3月22日、コロナウイルスに関する声明が掲載されました。
この声明では延期等に関する言及はされていないものの、「UAEに暮らし、訪れるすべての人の健康は我々のトッププライオリティであり、妥協はしない」としつつ、「今後の展開を注意深く見守り、万博に関わる全ての人のリスクを管理し最小化するため十分に備えていく」と述べています。
2021年4月まで、すべての開催をとりやめる可能性は現時点では低いかもしれませんが、現実的な対応としては、夏頃の状況に応じて会期を短縮する等の判断が求められることになりそうです。
[2020年3月31日追記]
ドバイ万博運営委員会にて、万博開催時期を1年間延期する提案がなされました。
延期の決定には、博覧会国際事務局で参加国の3分の2以上の賛成が必要となるため、当該手続きに従うとされています。
ksn Research & Consultingでも、万博開催に向けた現地状況を今後も注視し、適宜情報を発信していきます。
万博関係のビジネス機会を検討されている方は、ぜひ一度お問い合わせください。